郵便局でお金を借りる方法まとめ
小さな町から大都市まで全国に2万店舗以上もある郵便局は、誰もが知っている公的機関のひとつです。
現在は日本郵便株式会社として郵便・物流のほか保険業務、不動産事業を運営しており、そのなかには銀行業務もあり「ゆうちょ銀行」としてお金の貸付も行っています。
ゆうちょでお金を借りるには
ゆうちょ銀行でお金を借りる方法としては、基本的に「預入したお金を担保に借りる」方法があります。元からゆうちょ銀行の口座にある資産を担保とします。
財形貯金担保貸付の概要
財産形成貯金担保貸付には財形定額貯金、財形年金定額貯金、財形住宅定額貯金の3種類があります。
- 財形定額貯金→勤務者が財産を形成するために、給料やボーナスから天引きで3年以上継続して積み立てるもの
- 財形年金定額貯金→勤務者が豊かな老後のために給与やボーナスから天引きで5年以上継続して積み立てるもの
- 財形住宅定額貯金→勤務者が住宅資金作りのために、給与やボーナスから天引きで5年以上継続して積み立てるもの
財形貯金担保貸付のまとめ
- 貸付金額の上限→預入金額に利子を加えた金額の90%
- 貸付期間→2年
- 貸付の方法→貯金窓口での手続き
- 必要書類→貸付請求書・財形定額貯金残高通知書・保管証または貯金証書・届印・本人確認書類
財形貯金担保貸付の金利・返済方法
財産形成貯金を担保とした貸付の金利は「返済時の約定金利+0.25%」です。現在の約定利率は「0.010%」ですので、金利は年率で0.26%となります。
非常に利用しやすい貸付内容になっています。
借入限度額 | 預入金額の90%以内(1契約につき300万円まで) |
---|---|
貸付期間 | 最大2年 |
金利 | 返済時の約定金利+0.25% |
返済方法 | 通常預金に預入して自動返済 |
貯金担保自動貸付の概要
貯金担保自動貸付では、総合口座で管理している担保定額貯金・担保定期貯金を担保とします。通常の貯金残高を超える払戻の請求があった場合に、不足分を自動的に貸し付けるものです。
口座から残高以上の金額を下ろしたとき、その不足分を自動的に貸付とします。
- 担保定額貯金→総合口座に預入できる自動貸付が可能な定額貯金です。利用は1000円からとなっています。据置期間が預入日から起算して6ヶ月必要です。
- 担保定期貯金→総合口座に預入できる自動貸付が可能な定期貯金で、これも1000円から利用可能です。預入期間は3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年から選択できます。
貯金担保自動貸付のまとめ
- 貸付金額の上限→預入額の90%
- 貸付の方法→通常貯金の残高を超える払い戻しがあったとき、不足分を自動的に貸付する(記帳すると、現在高の欄にマイナスで表示される)
- 必要書類→総合口座通帳・届印・本人確認書類
貯金担保自動貸付の金利・返済方法
貯金を担保とした貸付の金利は定額貯金なら「返済時の約定金利+0.25%」、定期貯金なら「預入時の約定金利+0.5%」です。どちらの借入でも金利は1%未満です。
定期預金を担保に10万円を借りても金利は年率0.51%で、非常に利用しやすい内容です。
借入限度額 | 預入金額の90%以内(通帳1冊につき300万円まで) |
---|---|
貸付期間 | 最大2年 |
金利 |
|
返済方法 | 通常預金に預入して自動返済 |
国債等担保自動貸付の概要
国債は、個人でも購入することが可能で、それを担保とした貸付もゆうちょ銀行で行っています。総合口座で管理するゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口で購入した国債を担保として、額面金額の一定割合の額が融資されるものです。
対象となる国債は2種類です。
- 利付国債→誰でも購入できるのが利付国債です。償還日まで一定利率が適用されて、資金を着実に運用できる手段です。償還までの期間が2年または5年の中期国債と10年の長期国債の2種類があります。
- 個人向け国債→個人だけが購入できる国債です。ゆうちょ銀行は個人向けとして「固定・3年」「固定・5年」「変動・10年」の3種類の国債を取り扱っています。
国債等担保自動貸付のまとめ
貸付金額の上限→利付国債および個人向け国債の80%まで。かつ1人につき200万円まで。
- 貸付の方法→通常貯金の残高を超える払い戻しがあったとき、不足分を自動的に貸付する(記帳すると、残高欄がマイナスで表示される)
- 必要書類→国債等証券担保自動貸付利用請求書・総合口座通帳・加入帳または保護預り証書・届印・本人確認書類
国債等担保自動貸付の金利・返済方法
国債等担保自動貸付の金利は「貸付時の預入期間1年の定額貯金の約定金利+1.7%」となっています。
現在のこの定期貯金の金利は「0.010%」なので、これに1.700%を足した「年率1.71%」で借入できます。非常に有利な金利で借入できる貸付となっています。
借入限度額 | 個人向け国債の80%以内(1人につき200万円まで) |
---|---|
貸付期間 | 最大1年 |
金利 | 貸付時における預入期間1年の定期貯金の約定金利+1.70% |
返済方法 | 通常預金に預入して自動返済 |
貸付制度の利用条件・申し込み方法
ゆうちょ銀行でお金を借りるには、担保が必要となります。財産形成貯金や定額貯金、定期貯金、または利付国債、個人向け国債が担保となります。
他の銀行や証券会社を経由してこういったものを保有していても、ゆうちょ銀行では担保となりません。また、いくつかの利用条件があり、それに該当しないときには利用はできません。
以下のように定められています。
融資制度 | 担保 | 利用条件 |
---|---|---|
財形貯金担保貸付 | 財形定額貯金 | 勤労者の人 |
財形年金定額貯金 | 満55歳未満の勤労者 | |
財形年住宅定額貯金 | 満55歳未満の勤労者 | |
貯金担保自動貸付 | 担保定額貯金 | 申込時に本人確認が可能な人 |
担保定期貯金 | 申込時に本人確認が可能な人 | |
国債等担保自動貸付 | 利付国債 | 法人・個人を問わず利用可能 |
個人向け国債 | 個人であれば利用可能 |
上記の表から分かるように、学生は財形貯金担保貸付に申し込むことはできません。
申し込みでは、貸付のための請求書や貯金証書などが必要で、届出印と本人確認書類が必要です。個人向けカードローンのような審査はありません。担保付融資ですので、たとえば個人再生などで借金を整理した人でも、財産としての国債を残してあれば利用可能です。
JP BANKカードでキャッシング
JP BANKカードとは?
ゆうちょ銀行ではJP BANKカードというクレジットカードを発行しています。クレジットカードですので、キャッシング機能を付帯させることができ、これを使ってお金を借りることが可能です。
決済ブランドとしてVISA、Masterという国際的なブランドを使えるほか、国内で強いJCBカードとしても利用可能です。さらに一般カードもあればゴールドカード、若年層向けのカードもあり、カードの種類やランクによって設定可能なキャッシング枠に違いがあります。利用枠の最大はVISAまたはMasterのゴールドカード、JCBのカードで設定できる50万円で、その他は30万円となっています。
高額の設定ではありませんが、個人の消費者が日常的に使う分には充分な額でしょう。元来はショッピングカードですので審査が比較的ゆるめで、使い勝手の良いカードとして知られています。
カードの詳細
JP BANKカードALente(アレンテ)
- VISAカード
- 18歳から29歳までの人が対象(高校生を除く)
- 年会費→初年度無料、翌年から1350円
前年度に1回でもショッピングの利用があれば次年度も無料
利用限度額
JP BANKカード(一般)
- VISA、Masterの2つから選択
- 18歳以上の人が対象(高校生を除く)
- 年会費→初年度無料、翌年から1350円
以下の4つのうち1つを満たせば翌年からも無料
- ガス・電気・電話料金の支払いカードとして使う
- ゆうちょ銀行の給与預金を利用する
- ゆうちょ銀行の年金自動受取を利用する
- 直近1年間のショッピング利用額の合計が30万円以上
利用限度額
JP BANKカードゴールドカード
- 25歳以上の安定した収入のある人が対象
- 年会費→初年度1万800円、以下の2つのうちいずれかを満たせば翌年から優遇あり
- ショッピング利用が100万円以上300万円未満→20%割引
- ショッピング利用が300万円以上→50%割引
利用限度額
JP BANKカードJCB・EXTAGE
- 18歳から29歳までの人が対象(高校生を除く)
- 年会費→5年間無料、6年目から1350円
以下の4つのうち1つを満たせば翌年からも無料
- ガス・電気・電話料金の支払いカードとして使う
- ゆうちょ銀行の給与預金を利用する
- ゆうちょ銀行の年金自動受取を利用する
- 直近1年間のショッピング利用額の合計が30万円以上
利用限度額
JP BANKカードJCB(一般)
- 高校生を除く18歳以上の人が対象
- 年会費→初年度無料、翌年から1350円
以下の4つのうちいずれかを満たせば翌年からも無料
- ガス・電気・電話料金の支払いカードとして使う
- ゆうちょ銀行の給与預金を利用する
- ゆうちょ銀行の年金自動受取を利用する
- 直近1年間のショッピング利用額の合計が30万円以上
利用限度額
JP BANKカードの申し込み方法
申込書は、「インターネットで入力された内容を印字したもの」と白紙のものの2種類があります。ネット入力した内容を印字した申込書を請求すると1週間程度で自宅に届きます。
電話申し込みやネット完結型の申し込みは導入されていません。必ず郵送によって申込書を取り寄せます。印字のない申込書も請求できますが、内容はすべて自分で記入しなくてはならないため、手間がかかります。
JP BANKカードの返済方法
キャッシング利用の返済はショッピング利用代金と一緒に支払日に合算されて請求されます。すべて口座引き落としです。返済方法はリボ払いと一括払いの2種類から選択できます。
毎月少しずつ返済したいときにはリボ払いを選択しましょう。カードのブランドによって締め日と支払日が異なるので注意しましょう。
決済ブランド | 締め日 | 支払日 |
---|---|---|
VISA | 毎月末日 | 翌月26日 |
JCB | 毎月15日 | 翌月10日 |
Master | 毎月末日 | 翌月26日 |
ゆうちょ銀行が個人向け無担保融資に参入
ゆうちょ銀行を日本郵政株式会社は、総資産300兆円を超える超巨大企業です。郵政民営化によって誕生した私企業ですが、株主は100%が日本政府です。
そのため、いくら民間会社といっても事業には一定の制限があります。
無担保での現金貸付制度
ゆうちょ銀行が導入したいと考えているのは、個人向け融資事業です。現在は、有担保による貸付かJP BANKカードのキャッシング枠でしか個人向け融資は行われていません。
民間の銀行は消費者金融業者の持っている審査ノウハウを使って、個人向けカードローンを市場投入して実績を上げています。
日本郵政は巨大な資産がありながら、それを運用できていない実態があり、ゆうちょ銀行は豊富な資金を背景に、民間の銀行のようなカードローンを発行したいと考えています。
2017年には個人向け融資に本格的に参入することが発表されました。金融庁と総務省の認可が下りれば、無担保・無保証人によるカードローンの発行は可能です。
とりあえず決まってるのは、口座貸越サービスです。現金を引き出したり、公共料金などを引き落としたりする際に残高が不足していたら、不足分を貸付する仕組みのローンです。
借入可能額は上限を50万円として、金利を10%台の低めの設定することが検討されています。
民業圧迫という問題点が指摘されている
ただ、これには多くの批判があります。ゆうちょ銀行が無担保融資を手がけることで、公正さを欠く恐れがあるためです。
ゆうちょ銀行の口座貸越による貸付は、すでに民間の金融機関が取り扱っているカードローンと同等の機能であって、民業圧迫であるとされています。
民間のカードローン事業も飽和気味であり、民間の消費者金融業者は顧客獲得に必死という状態です。そこに巨大な資金を背景にした100%日本政府株主の会社が事業に乗り出すことは、大きな摩擦を生むことが懸念されています。
銀行などがカードローンに積極的に推進したことによって、多重債務者を増やしているという批判は高まっており、金融庁としてもゆうちょ銀行がカードローン事業に参画することには、難色を示しています。
利用者側からすると、口座貸越ローンが端緒となって低金利のカードローンを提供してもらえる分には助かるはずですので、今後の推移には注目したいところです。
まとめ
郵便局の「ゆうちょ銀行」からお金を借りるには、原則的に元手となる担保が必要です。JP BANKカードは利便性は高いですが、申し込みから発行までに時間がかかるというデメリットがあります。
今後は個人向けカードローンを導入する動きを見せており、期待の持てるところです。